物流分析手法・EIQマトリクス

1-2. 従来計算(ABC分析)とTera計算の違い

現代の物流施設計画において、単なる過去データの集計だけでは、高度化する物流センターの最適設計は不可能です。Tera計算では、長年現場で使われてきた従来のABC分析によるランク別集計手法を「従来計算」と呼んでいます。

本節では、データが持つ意味の分断を引き起こす従来のABC分析の限界を明確にし、それを克服するために開発されたTera計算独自の「EIQマトリクス集計」の相違点や、より正確な設備規模計算を導き出すためのデータ分析の考え方について深く解説します。

1. 従来計算とTera計算の基本概念の違い

従来計算(ABC分析)の限界と情報の分断

従来のABC分析は、出荷実績からアイテム集計(売れ筋・死に筋)と出荷先集計(大口・小口)をそれぞれA・B・Cの3ランクに分けて独立集計する手法です。 この手法はそれぞれの「結果の分布」を見るのには適しており、二つの表の総合計値は一致します。

しかし、最大の欠点は表同士の関連性(相関)が全くないことです。 そのため、「アイテムランクAの超売れ筋商品が、どのような出荷先ランク(大口の問屋なのか、小口の個人客なのか)へどれだけの比率で配分されているか」という立体的な構造を把握できません。 この情報が欠落していると、ピッキングゾーンの適正な面積や、ソーターなど自動化機器の導入効果を正確に測れず、最適な物流施設計画や運用検討の基盤データとしては不十分でした。

Tera計算の提案:データを相関させる「EIQマトリクス表

Tera計算では、この「情報の分断」を解決するため、ランクをより緻密な5分割(A1, A2, B, C, D)に拡張し、アイテムランク(5)× 出荷ランク(5)= 25ブロックの格子状に区分してクロス集計・相関させる手法を採用しています。 これを「EIQマトリクス表」と呼びます。

同一ランク区切りの中で「行数(出庫回数)」「バラ数」「ケース換算」「PL(パレット)換算」「容積換算」「重量換算」といった物流現場で必須となる指標を自由に切り替えて表示できる点が最大の特徴です。 これにより、作業エリアごとの必要物量(例えば、どのゾーンで何回のピッキングが発生するか、補充に必要なケース数はいくつか、運搬にかかるパレット数はどれだけかなど)を立体的に可視化し、非常に精度の高いシミュレーションが可能となります。

2. EIQマトリクス集計表と図表化の重要性

第1項 EIQマトリクス集計表の役割と可読性向上

  • 表示単位の換算ルールと整合性の確保:

    EIQマトリクスにおける表示単位のケース・PL・容積・重量は、すべて基準となる「バラ数」から計算された換算値です。 これにより、マトリクス表の横計は従来計算の「アイテム集計」と、縦計は「発送先集計」と常にリンクし、データ全体の合致(整合性)が完璧に担保されます。

  • 巨大データのグループ化による直感的な理解:

    本来の生のEIQ表(例えば、発送先400件 × アイテム4000種など)は表計算ソフトでもスクロールしきれないほど巨大になり、人間の目では傾向を読み取れず可読性が著しく落ちます。 Tera計算ではこれを5×5のランクにグループ化(EIQマトリクス表)することで、経営層や現場作業者でも一目で状況を把握できるよう実用性を高めています。 また、画面上で視覚的に分布の散らばりを確認できる「EIQ散布図」としても出力可能であり、直感的な分析をサポートします。

第2項 設備規模計算における「Tera設定」の重要性

物流機器選定(例えばソーターなどの時間あたり処理能力の決定)においては、ボトルネックを防ぐためにピーク時の物量を参照することが一般的です。 しかし、建物面積や保管ラックの総数を決定する配送センターの設備規模計算においては、特定の日に偏らない「出荷データ全体の平均(Tera設定)」を採用すべきであるというのが当研究所の鉄則です。

  • 特定ピーク日を避ける理由1(全アイテムの網羅性): 特定の出荷日のみを切り取って計算すると、たまたまその日に出荷がなかったアイテム(ロングテール商品など)の情報が抜け落ちてしまい、倉庫全体としての流動性評価や保管効率の評価が大きく歪むためです。 全データ対象(Tera設定)であれば、すべてのアイテムの動きを正確に網羅可能です。
  • 特定ピーク日を避ける理由2(過剰投資の防止): 出荷ピーク時の異常な物量増加分は、原則として安全在庫からの前倒し出庫や人員の増員運用等で一時的に吸収運用するのが物流の基本です。 これを基準に物流施設計画を行うと、センター本体の建屋面積や固定設備が過剰規模(オーバースペック)となり、閑散期に無駄な減価償却費を払い続けることになってしまうのを防ぐためです。

第3項 時間・ルート・区分情報の集計反映

より現場に即した物流施設計画を練るため、EIQマトリクスには以下の詳細な属性情報も集計に反映させます。

  • 出荷時間帯(1時間区分): 締め時間前のオーダー集中度合いを可視化し、前倒し作業の可否判断や、時間帯別物量に基づくトラックの効率的な着床手配スケジュール(バース予約)の策定に活用します。
  • 出荷ルート: 自社便の方面別(北エリア・南エリア等)グループ指定や、運送会社・路線便・宅配便ごとの積み込みバースの仕分け作業量の予測に活用し、プラットホームの混雑を防ぎます。
  • 出荷区分・アイテム情報: 出荷先ごとに要求されるオリコン/段ボール等の荷姿指定、あるいは流通加工(タグ付け、値札付け)・品質検査など、入荷・出荷時に発生する特殊作業の条件と必要スペースの把握に用います。

3. EIQマトリクス集計表の運用応用例

第6項 EIQマトリクスによるピッキング戦略の最適化

発送先および商品を物量の多い順にマトリクス化した際、その数値をどのように実際の運用ルールへ変換するかが腕の見せ所です。 例えば、データ分析の結果、「0.5パレット以上/PIC(1回のピッキングで発生する量)」の物量グループを抽出できた場合、これを「パレット出荷」と定義します。

EIQマトリクス表のグループ分類事例

この大口であるパレット出荷グループは、SAS(順立て出庫システム)や小口向けの通常ピッキングエリアでわざわざ小分けにして処理すると、逆に動線や手間が増えて効率が著しく落ちます。 そのため、広い通路を確保した種まきエリア(仕分けエリア)で、フォークリフト等を用いて2〜3発送先分を一括処理(総量ピッキング後に仕分け)するのが最適であると論理的に判断できます。 一方で、それ以外の小口グループは、SASや標準的な歩行ピッキングエリアでの保管・出庫に向いていると切り分けることができます。

EIQマトリクス元データから加工したスケジュール表

このようにEIQマトリクス表を用いることで、単なる現状分析にとどまらず、どのアイテムをどのピッキングエリア(SAS等)へいつ補充すべきかというタイミングや、エリアごとに必要なコンテナ数を正確に算出し、日々の実用的な作業スケジュール表へ落とし込むことが可能になります。 このプロセスの積み重ねが、無駄のない設備規模計算へと結実するのです。

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