現代の物流施設計画において、単なる過去データの集計だけでは、高度化する物流センターの最適設計は不可能です。Tera計算では、長年現場で使われてきた従来のABC分析によるランク別集計手法を「従来計算」と呼んでいます。
本節では、データが持つ意味の分断を引き起こす従来のABC分析の限界を明確にし、それを克服するために開発されたTera計算独自の「EIQマトリクス集計」の相違点や、より正確な設備規模計算を導き出すためのデータ分析の考え方について深く解説します。
従来のABC分析は、出荷実績からアイテム集計(売れ筋・死に筋)と出荷先集計(大口・小口)をそれぞれA・B・Cの3ランクに分けて独立集計する手法です。 この手法はそれぞれの「結果の分布」を見るのには適しており、二つの表の総合計値は一致します。
しかし、最大の欠点は表同士の関連性(相関)が全くないことです。 そのため、「アイテムランクAの超売れ筋商品が、どのような出荷先ランク(大口の問屋なのか、小口の個人客なのか)へどれだけの比率で配分されているか」という立体的な構造を把握できません。 この情報が欠落していると、ピッキングゾーンの適正な面積や、ソーターなど自動化機器の導入効果を正確に測れず、最適な物流施設計画や運用検討の基盤データとしては不十分でした。
Tera計算では、この「情報の分断」を解決するため、ランクをより緻密な5分割(A1, A2, B, C, D)に拡張し、アイテムランク(5)× 出荷ランク(5)= 25ブロックの格子状に区分してクロス集計・相関させる手法を採用しています。 これを「EIQマトリクス表」と呼びます。

同一ランク区切りの中で「行数(出庫回数)」「バラ数」「ケース換算」「PL(パレット)換算」「容積換算」「重量換算」といった物流現場で必須となる指標を自由に切り替えて表示できる点が最大の特徴です。 これにより、作業エリアごとの必要物量(例えば、どのゾーンで何回のピッキングが発生するか、補充に必要なケース数はいくつか、運搬にかかるパレット数はどれだけかなど)を立体的に可視化し、非常に精度の高いシミュレーションが可能となります。
EIQマトリクスにおける表示単位のケース・PL・容積・重量は、すべて基準となる「バラ数」から計算された換算値です。 これにより、マトリクス表の横計は従来計算の「アイテム集計」と、縦計は「発送先集計」と常にリンクし、データ全体の合致(整合性)が完璧に担保されます。
本来の生のEIQ表(例えば、発送先400件 × アイテム4000種など)は表計算ソフトでもスクロールしきれないほど巨大になり、人間の目では傾向を読み取れず可読性が著しく落ちます。 Tera計算ではこれを5×5のランクにグループ化(EIQマトリクス表)することで、経営層や現場作業者でも一目で状況を把握できるよう実用性を高めています。 また、画面上で視覚的に分布の散らばりを確認できる「EIQ散布図」としても出力可能であり、直感的な分析をサポートします。
物流機器選定(例えばソーターなどの時間あたり処理能力の決定)においては、ボトルネックを防ぐためにピーク時の物量を参照することが一般的です。 しかし、建物面積や保管ラックの総数を決定する配送センターの設備規模計算においては、特定の日に偏らない「出荷データ全体の平均(Tera設定)」を採用すべきであるというのが当研究所の鉄則です。
より現場に即した物流施設計画を練るため、EIQマトリクスには以下の詳細な属性情報も集計に反映させます。

発送先および商品を物量の多い順にマトリクス化した際、その数値をどのように実際の運用ルールへ変換するかが腕の見せ所です。 例えば、データ分析の結果、「0.5パレット以上/PIC(1回のピッキングで発生する量)」の物量グループを抽出できた場合、これを「パレット出荷」と定義します。
この大口であるパレット出荷グループは、SAS(順立て出庫システム)や小口向けの通常ピッキングエリアでわざわざ小分けにして処理すると、逆に動線や手間が増えて効率が著しく落ちます。 そのため、広い通路を確保した種まきエリア(仕分けエリア)で、フォークリフト等を用いて2〜3発送先分を一括処理(総量ピッキング後に仕分け)するのが最適であると論理的に判断できます。 一方で、それ以外の小口グループは、SASや標準的な歩行ピッキングエリアでの保管・出庫に向いていると切り分けることができます。
このようにEIQマトリクス表を用いることで、単なる現状分析にとどまらず、どのアイテムをどのピッキングエリア(SAS等)へいつ補充すべきかというタイミングや、エリアごとに必要なコンテナ数を正確に算出し、日々の実用的な作業スケジュール表へ落とし込むことが可能になります。 このプロセスの積み重ねが、無駄のない設備規模計算へと結実するのです。