物流施設計画及び改善|関連知識 Menu

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4-3.データ分析及びシステム構築に関する説明

出荷データ起点による物流システム設計・EIQ分析とPCB分析シミュレーション

1-Ⅰ 物流システム特性とデータ分析の基本

生産物流と販売物流の違い

🔍 【図解説明】生産物流と販売物流の特性の違い

上図は、サプライチェーン全体における「調達・生産(生産物流)」と「販売(販売物流)」の境目を示した基本構図です。

  • 生産物流(Material Flow): 工場や原材料倉庫を中心とした物流です。生産計画に基づいて計画的に荷物が動くため、コントロールが容易で需要波動が比較的平穏です。
  • 販売物流(Physical Distribution): 配送センターから卸・小売・エンドユーザーへと向かう物流です。実際の「注文情報」に直接左右されるため、多品種小口化や突発的な出荷波動が極めて発生しやすい特性を持ちます。

配送センターのシステム構築においては、この「販売物流特有の不定貫・不定時な要求」に対応するため、事前の高度なデータ分析が必須となります。

生産物流と販売物流の特性の違いは極めて大です。

物流システムとは:

1.複雑・単純システム(Complicated Low Technology)
高度なハイテク機器を並べることだけが正解ではなく、現場作業とITが複雑に絡み合うローテク要素の最適化が求められます。

2.多数制約条件下のシステム
物流の最適化には多数の正解が存在します。また、出荷物量や荷姿の条件変化によって、ある場面での「正解」が別の場面では「不正解」に、逆に「不正解」が「正解」に反転することもあります。

配送センター・物流システムは、多数の制約条件が存在するシステムであり、多数の正解があります。
ただし、すべての設計は「基本システム」の上に成り立っている必要があります。
ここでいう基本システムとは、EIQデータやPCB分析に基づくシステムのことです。客観的なデータに基づいているため、誰が論理的に計画してもブレのない最適なシステムに到達します。データに基づかない思いつきのシステム構築は失敗の大きな原因となります。

1-Ⅱ システム・アプローチ(考え方の理念)

システム・アプローチ

Systems Thinking(システム思考)
単に最新機器を導入するのではなく、どのように考えてシステム構築を行うかという「理念・考え方」が最も重要です。急激な経済動向や社会環境の変化に対して、収集したデータをどう読み解き、どう対処するかの戦略的思想が問われます。

💡 配送センターの真の使命:
配送センターの最大の使命は「注文を受けた品物を、指定期日までに、間違いなく顧客へ届けること」に尽きます。過度な自動化・機械化やコスト削減自体はあくまで手段であり、目的・使命そのものではありません。

入荷から出荷に至るパターンと「PCB分析」の重要性

入荷から出荷に至るパターン

🔍 【図解説明】PCB分析(P=パレット、C=ケース、B=バラ)の変容パターン

上図は、荷物が倉庫に入荷してから出荷されるまでの荷姿の変化(トランスフォーメーション)を表しています。

  • P(Pallet): パレット単位の大口荷姿。
  • C(Case): 段ボールケース単位の中口荷姿。
  • B(Bara/Piece): バラ・ピース単位の小口荷姿。

入荷時の形態(P/C/B)と、出荷時の形態(P/C/B)の組み合わせパターンを定量的に把握する手法をPCB分析と呼びます。例えば「Pで入ってBで出る(P➔B)」比率が高い現場では、広大な破封・ピースピッキングエリアと高機能なWMSが必要となり、「Cで入ってCで出る(C➔C)」が多い現場では、クロスドックやソーター主体の物流システムが有効となります。

ピッキング方法の選定
Single Picking(摘み取り方式): オーダーごとに1作業者が注文品を集めてまわる方式。
Batch Picking(種まき方式): 複数オーダー分を一括ピッキングした後、出荷先別に仕分ける方式。
※ Batch Pickingを採用する場合は、ピッキング後の二次仕分け(ソーターやアソートラック)の設計が必要になります。

1-Ⅲ 物量と適合物流機器(適合マテハンの選定)

物量と適合物流機器

(鈴木震先生 オリジナル構成図)

🔍 【図解詳細説明】IQ曲線とPCB(荷姿)に応じた適合物流機器の選定マップ

本図は、データ分析(IQ分析およびPCB分析)によって得られた「出荷数量(Q)」「種類数(I)」「荷姿(P/C/B)」のデータから、導入すべき最適な物流システム・保管マテハンを導き出すための体系図です。

  • Aランク(高流動・大量出荷ゾーン):
    出荷が集中するエリアです。パレット自動倉庫、ミニロード型ケース自動倉庫、A型自動Picマシン、高速ソーターなどの自動化・機械化機器を集中配置し、高スループット処理を実現します。
  • Bランク(中流動ゾーン):
    リーチフォークリフト+パレットラック、バケット棚、カルーセル(回転棚)など、保管効率とピッキング作業性を両立させた機器を選定します。
  • Cランク(低流動・多品種小口ゾーン):
    SKU数は膨大ですが1点あたりの出荷量はごくわずかです。高額な自動化機器は導入せず、固定式中量棚や手押し台車カートによるローテク運用を採用することで、過剰投資を防ぎ全体のROIを最適化します。

1-Ⅳ データの見方とデータ位置付け手法

データ分析を行う際、最も陥りやすい罠が「取得した一日分のデータをそのまま全社の標準値として扱ってしまうこと」です。

データは見ないで観る
先入観を持たないこと
データを多く集めない
見ているだけでは100ケースは100ケース

🔍 【図解説明】データ分析を成功させる4つの心得(スライドの解説)

  • データは見ないで「観る」(image220.jpg): 単に数字を見るのではなく、背景にある現場の動きを観察・解読します。他社の事例研究を重ねることで、数値の意味を深く洞察できるようになります。
  • 先入観を持たない(image225.jpg): 「あの機器を使いたい」「他社と同じにしよう」といった機器ありきの思想を排除します。物流システムはEIQデータに基づき独自に構築するものです。
  • データを多く集めない・10%の差は誤差(image226_2.jpg): 精密さにとらわれすぎず、必要なデータだけを絞り込んで素早く検討に入ります。物流データの10%程度のブレは誤差範囲とし、全体の傾向をスピーディに掴むことが優先です[cite: 1]。
  • 荷姿(PCB)でデータを読む(image227.jpg): 「100ケース」という数字も、1パレット=24ケースという条件で読めば「4パレット + 4ケース」となります。PCB分析の視点を持つことで、実際のパレット荷役とケースピッキングの具体的な作業負荷が見えてきます。

調査対象日の相対的な位置付け(最大と平均の把握)

「分析対象とした特定の1日の物量は、年間の最大値と平均値に対してどの位置にあるか?」を把握しなければ、正確なシステム構築はできません。

データの位置付け(2月23日分析日と5月9日最大日の比較グラフ)

🔍 【図解説明】分析日(2/23)と最大日(5/9)の変動比較分析(image228.jpg)

上図は、特定分析日(2月23日)の物量と、その後の実動期間(4月25日〜5月9日)における日別物量変動グラフです。

  • 分析日(2/23)のデータ: 出荷量 36,402ボール(うち冷食 24,466ボール)、作業時間 7.7時間。グラフ上では赤の基準線(24,466ボール)として示されています。
  • 最大日(5/9)のデータ: 冷食出荷量が 27,238ボールに達し、想定作業時間は 8.2時間に跳ね上がっています。

実務上のインサイト: 分析日(2/23)の基準物量(24,466ボール)に合わせてシステム能力や定時人員を設計すると、5月9日のようなピーク日(27,238ボール)に物流システムがパンクします。分析データを評価する際は、基準日が年間ピークに対してどの位置にあるかを捉え、最大日(8.2時間稼働)をカバーできる設備バッファと人員シフト(残業・派遣確保)をあらかじめ織り込むことが不可欠です。

データファイルのフィールド定義と運用ルールの解析

フィールド名の定義とピッキング・同梱仕様

🔍 【図解説明】データフィールドの定義とピッキング・同梱ロジック(image229.jpg)

上図は、WMS(倉庫管理システム)から抽出した出荷トランザクションデータの構成例と、その運用ルールの定義です。

  • 主要フィールド: 出荷日、荷主管理部門、代理店(発注者)、発送先(End Customer)、発注番号、出荷番号、商品番号・名(Inventory Item Code)、ロット番号、シリアル番号、出荷個数などが定義されています。
  • ピッキング・同梱ルール(画像下部テキスト):
    ①「End Customer Number単位にInventory Item Codeをピッキングし、ピッキングした商品のLot NumberおよびSerial Numberを読み取り出荷情報に付加する。」
    ②「End Customer Number単位にピッキングした商品は、発送先単位に同梱して出荷する。」

実務上のインサイト: システム構築においては、単に「何を何個送るか」という数値データだけでなく、「どの単位(End Customer)でピッキングし、どの段階で名寄せ・同梱するか」というロジックまでデータ構造から読み解く必要があります。SKU(在庫管理最小単位)と同梱単位が明確になることで、必要な梱包台数やバーコードスキャナの運用フローを正確に設計できます。

2-Ⅰ〜Ⅳ EIQ分析の概要と目的

EIQ研究の7つのテーマと対象者

🔍 【図解説明】EIQ研究の7つのアプローチと実務者・研究者の役割(image230.jpg)

上図は、EIQ手法に関する7つの研究テーマと、それぞれを「実務者」と「研究者」のどちらが担うべきかを定義した全体像です。

  • 実務者が主導するテーマ(現場運用・システム構築):
    1. EIQ手法による簡略的現状分析に関する研究
    2. EIQの特性に合った運用・情報・機器の選択方法に関する研究
    6. EIQ分析と機能要求から物流システム設計を行うための研究
    7. 出庫効率を上げるためのDATA加工方法の研究[cite: 1]
  • 研究者が主導するテーマ(理論モデル・データ変換):
    3. DATAソースからEIQの特性を導き出す手法と表現方法の研究
    4. EIQの特性パターンからDATAソースを作る研究
    5. DATAソース解析により設定出庫方法の負荷を推定する研究

実務上のインサイト: 現場のシステム構築を担当する実務者は、単に集計ロジック(研究者領域)を追いかけるのではなく、「EIQデータから得られた出荷特性から、どのようなマテハン設備やオペレーションを選択・設計するか(テーマ2・6)」に注力することが成功の鍵となります。

EIQ分析プログラムと基本ステップ

EIQ分析・システム設計・物流コスト計算プログラムの総合フロー

🔍 【図解詳細説明】データ分析からシステム設計・物流コスト計算への連動フロー(image234.jpg)

上図は、EIQ分析データを出発点として、配送センターの空間・荷役設計から最終的な投資コスト算出までを一気通貫でシミュレーションする仕組みを表しています。

  • EIQ分析編・EIQ応用: EIQデータから理論在庫・発注点・入荷量を予測し、欠落データ救済やEIQマトリクス・曲線を自動出力します。
  • システム設計資料編(出荷分析・荷役設計): 時間当たり出荷量の平準化、ケース・バラ・PL単位の分離(PCB分析)、入荷・出庫・補充・バラピッキングの各荷役負荷計算、検品・梱包数、バース数の設定を行います。
  • 物理エリア設計(入荷・保管・出荷エリア): 必要PL数から入荷・保管・出荷エリアの必要面積計算、作業人員計算、機器配置図の自動作成を行います。
  • 物流コスト計算編(営業ツール): 建屋・機器・資材・人員・配送コストを集計し、投資対効果(ROI)、リース料、減価償却費までをシミュレーションします。

実務上のインサイト: 優れたデータ分析は、レポート作成で満足するのではなく、図のように「物理的な必要面積(保管・出荷)」「必要人員」「マテハン設備」そして「ROI・物流コスト」の試算まで自動連動させるシステム構築の基盤として活用されて初めて真価を発揮します。

EIQ分析の目的1
EIQ分析の目的2
EIQ分析の目的3
EIQ分析の目的4
EIQ分析の目的5
EIQ分析の目的6

🔍 【図解説明】EIQ分析が解き明かす6つの課題

EIQ分析は、以下の疑問に定量的な解答を与えます。

  1. どのような保管設備(パレットラック・ケース棚・自動倉庫)が必要か?
  2. ピッキング方式はシングル摘み取りか、バッチ種まきか?
  3. どのようなレイアウト動線が最も歩行距離を短縮できるか?
  4. どのようなマテハン機器(コンベヤ・ソーター・AGV)を導入すべきか?
  5. 出荷作業の時間帯波動に合わせた最適な人員配置はいくつか?
  6. 将来の物量成長に対してシステムがどこまで拡張性を耐えられるか?

2-Ⅴ〜Ⅶ EIQ指標の読み方と必要データ

1. アイテム数の比率(I分析): 全SKUのうち、実際に稼働(出荷)しているSKUの割合。

アイテム数の比率

2. 物量の比率(Q分析): 出荷数量の集中度(パレートの法則:上位20%の商品が全体物量の80%を占めるか)。

物量の比率

3. 発送先数の比率(E分析): 配送先(顧客)ごとの注文頻度と個口数の偏り。

発送先数の比率

4. 発送物量の比率(EQ分析): 1納品先あたりの出荷ボリューム(大口大物か小口多頻度か)。

発送物量の比率
EIQとは1
EIQとは2

EIQ分析およびPCB分析に必要な調査項目

EIQ分析の必要項目1
EIQ分析の必要項目2
EIQ分析の必要項目3

2-Ⅷ〜Ⅸ EIQマトリクスとレイアウト設計への落とし込み

EIQマトリクス1
EIQマトリクス2
EIQマトリクス3

分析結果からレイアウト図(空間設計)への連動

レイアウト図との関係

🔍 【図解説明】データ分析(EIQ・PCB)からレイアウトへの還元

データ分析の最終ゴールは、分析レポートを作成することではなく、実際の「配送センターのレイアウト図(空間配置)」へ落とし込むことです。

  • 高流動ゾーン(Aランク × ケース/パレット荷姿): 出荷口至近に配置し、フォークリフトや自動ソーターへ直結させます。
  • 中流動ゾーン(Bランク × バラ荷姿): 中量棚やデジタルピッキングシステム(DPS)を配し、歩行動線を最適化します。
  • 低流動ゾーン(Cランク × 長期保管): 倉庫奥側や高層中二階(メザニン)に配置し、坪効率(空間利用率)を極大化します。

このように、データ分析PCB分析EIQ分析という一連の手順を経ることで、合理的で現場が動きやすい理想的な物流システムの構築が完了します。