現代のサプライチェーンにおいて、最適な物流施設計画を立案することは、企業の利益率と競争力を左右する最も重要な経営課題の一つです。とくに、全国に点在する配送センターをどのように再編するかという「物流拠点(立地)」の選定は、企業の固定費と変動費のバランスを根底から覆すインパクトを持っています。
本章では、日用雑貨会社のダイナミックな再編事例を例に挙げます。 この事例を通じて、拠点を集約(立地変更)した際に生じるコストと人員の大幅な削減効果、そしてその裏で必ず発生する「物流トレードオフ(二律背反)」の構造について、実務的な視点から深く解説します。
かつての高度経済成長期には「より消費者に近い場所に細かく拠点を置く」ことが正解とされていました。しかし、ある日用雑貨会社は、大胆な物流施設計画の見直しにより、全国の物流拠点(立地)を統合する決断を下しました。
上の図が示す数値と日本地図上の変化を詳しく分析すると、単なる数の減少にとどまらない、戦略的な物流拠点(立地)再編のダイナミズムが浮かび上がってきます。
【集約前の過剰な分散状態(9拠点体制・合計137名)】
かつては日本全国の消費地に合わせて、販社センターを細かく配置していました。 特に注目すべきは関東エリアです。 埼玉(28名)、千葉(15名)、東京(25名)と、ごく近い距離に3つの拠点が乱立し、関東だけで実に合計68名もの人員を抱え、安全在庫や管理維持費が著しく重複する非効率な状態に陥っていました。 そのほかにも、北海道(10名)、宮城(6名)、名古屋(15名)、大阪(18名)、岡山(7名)、福岡(13名)と、全国に赤い点が9つ点在していました。
【集約後の広域ハブ拠点化(5拠点体制・合計93名)】
不要な販社センターを思い切って廃止し、物流ネットワークを大きく5つの広域ブロックに統合しました。 地図上の赤い点は、北海道・東北・関東・関西・九州の5箇所へと整理されています。
特に過剰だった「関東東北エリア」は、宮城・埼玉・千葉・東京の4拠点を統合して40名体制へと大幅にスリム化されました。 また、「近畿中国エリア(名古屋・大阪・岡山を統合して30名)」など、各ブロックの中央に拠点を置くことで、会社全体で44名(約32%)もの人員削減という強烈なインパクトを生み出しています。
図の左下に記載されている通り、この集約によって「輸送費増(赤字)」という副作用は生じましたが、それを遥かに凌駕する「在庫・人員削減効果」「管理維持費削減効果」が得られ、最終的に「16%のトータルコスト削減効果」を叩き出しています。 これが物流施設計画の真髄です。
トータル物流コストの削減効果:16%削減
拠点を減らしたことで、後述する配送コスト(運賃)の増加というデメリットが発生しました。 しかし、それを遥かに上回るスケールメリットにより、固定費・人員・安全在庫の削減を実現し、企業全体の物流コストの大幅な圧縮(16%減)を達成しました。
高度な物流施設計画を立案する際、必ず直面するのが「あちらを立てればこちらが立たず」という物流トレードオフのジレンマです。 拠点を集約(9拠点 ➔ 5拠点に統廃合)した際に発生する「削減されるコスト」と「増加するコスト」の二律背反の構造を分解してみましょう。
この日用雑貨会社の事例から、私たちが今後の物流施設計画において学ぶべき重要なインサイトは以下の2点に集約されます。
拠点を減らすと配送距離が伸びるため、「輸送費」は必ず増加するというのが物流トレードオフの絶対法則です。 しかし、現代の物流施設計画では輸送費単体で評価してはいけません。増加する輸送費を上回る規模で「在庫」「人員」「管理維持費」の削減額を生み出せるかどうかが勝負の分かれ目であり、この事例では見事に全体で16%のコストダウン(トータルコストでの勝利)に成功しています。
各都道府県単位に細かく置いていた販社センターを廃止し、エリアごとの広域ハブ拠点にまとめることで、拠点運営の効率化と高度な標準化(自動化設備の導入など)を図る典型的なマクロ物流再編モデルです。 新たな物流拠点(立地)には、高速道路のインターチェンジ至近距離など、広域配送に耐えうる絶好のロケーションが求められます。