物流施設計画及び改善|関連知識 Menu

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物流ネットワーク最適化

3-8.物流施設計画の要:物流拠点(立地)の集約と物流トレードオフ

現代のサプライチェーンにおいて、最適な物流施設計画を立案することは、企業の利益率と競争力を左右する最も重要な経営課題の一つです。とくに、全国に点在する配送センターをどのように再編するかという「物流拠点(立地)」の選定は、企業の固定費と変動費のバランスを根底から覆すインパクトを持っています。

本章では、日用雑貨会社のダイナミックな再編事例を例に挙げます。 この事例を通じて、拠点を集約(立地変更)した際に生じるコストと人員の大幅な削減効果、そしてその裏で必ず発生する「物流トレードオフ(二律背反)」の構造について、実務的な視点から深く解説します。

1.日用雑貨会社における物流拠点(立地)変更の事例(マクロな見方)

かつての高度経済成長期には「より消費者に近い場所に細かく拠点を置く」ことが正解とされていました。しかし、ある日用雑貨会社は、大胆な物流施設計画の見直しにより、全国の物流拠点(立地)を統合する決断を下しました。

日用雑貨会社立地変更の例

🔍 【図解の読み解き】集約前後の具体的な人員配置と削減のメカニズム

上の図が示す数値と日本地図上の変化を詳しく分析すると、単なる数の減少にとどまらない、戦略的な物流拠点(立地)再編のダイナミズムが浮かび上がってきます。

【集約前の過剰な分散状態(9拠点体制・合計137名)】
かつては日本全国の消費地に合わせて、販社センターを細かく配置していました。 特に注目すべきは関東エリアです。 埼玉(28名)、千葉(15名)、東京(25名)と、ごく近い距離に3つの拠点が乱立し、関東だけで実に合計68名もの人員を抱え、安全在庫や管理維持費が著しく重複する非効率な状態に陥っていました。 そのほかにも、北海道(10名)、宮城(6名)、名古屋(15名)、大阪(18名)、岡山(7名)、福岡(13名)と、全国に赤い点が9つ点在していました。

【集約後の広域ハブ拠点化(5拠点体制・合計93名)】
不要な販社センターを思い切って廃止し、物流ネットワークを大きく5つの広域ブロックに統合しました。 地図上の赤い点は、北海道・東北・関東・関西・九州の5箇所へと整理されています。 特に過剰だった「関東東北エリア」は、宮城・埼玉・千葉・東京の4拠点を統合して40名体制へと大幅にスリム化されました。 また、「近畿中国エリア(名古屋・大阪・岡山を統合して30名)」など、各ブロックの中央に拠点を置くことで、会社全体で44名(約32%)もの人員削減という強烈なインパクトを生み出しています。

図の左下に記載されている通り、この集約によって「輸送費増(赤字)」という副作用は生じましたが、それを遥かに凌駕する「在庫・人員削減効果」「管理維持費削減効果」が得られ、最終的に「16%のトータルコスト削減効果」を叩き出しています。 これが物流施設計画の真髄です。

拠点数と人員の劇的な変化

  • 集約前(9拠点体制): 全国9箇所に販社センターという細かい物流拠点(立地)を分散配置していました。
    合計人員:137名
  • 集約後(5拠点体制): エリアの境界線を再定義し、広域エリアをカバーする大型ハブ拠点へ集約しました。
    合計人員:93名44名 / 約32%もの大幅な人員削減

経営に与えたトータルコスト削減効果

トータル物流コストの削減効果:16%削減

拠点を減らしたことで、後述する配送コスト(運賃)の増加というデメリットが発生しました。 しかし、それを遥かに上回るスケールメリットにより、固定費・人員・安全在庫の削減を実現し、企業全体の物流コストの大幅な圧縮(16%減)を達成しました。

2.構造の解説(物流における「物流トレードオフ」)

高度な物流施設計画を立案する際、必ず直面するのが「あちらを立てればこちらが立たず」という物流トレードオフのジレンマです。 拠点を集約(9拠点 ➔ 5拠点に統廃合)した際に発生する「削減されるコスト」と「増加するコスト」の二律背反の構造を分解してみましょう。

物流拠点(立地)を集約した場合の「物流トレードオフ」
🔻 コストが減る要素(メリット)
  • 在庫削減: 拠点ごとに抱えていた無駄な安全在庫の重複が完全に解消され、会社全体の総在庫量が劇的に減少します。
  • 人員削減: 現場でピッキングを行う作業者や、各拠点をまとめる管理者の重複が解消され、生産性が向上します(事例では137名 ➔ 93名へ削減)。
  • 管理維持費の削減: 複数の倉庫賃料(地代家賃)、光熱費、マテハン設備費、そしてWMSなどのシステム維持費が大幅に削減されます。
🔺 コストが増える要素(デメリット)
  • 輸送費増: 物流拠点(立地)の数が減るということは、各拠点から最終的な納品先(店舗や個人宅)までの「物理的なラストワンマイルの距離」が伸びることを意味します。 そのため、トラックの配送料金(輸配送費・ガソリン代・ドライバー人件費)は確実に増加します。
差引効果:増加する輸送費を吸収し、全体として「16%のトータルコスト削減効果」を達成!

3.この事例が意味するインサイト(物流施設計画の要点まとめ)

この日用雑貨会社の事例から、私たちが今後の物流施設計画において学ぶべき重要なインサイトは以下の2点に集約されます。